「北海道産」だけではブランドにならない。NORTH FARM STOCKに学ぶ、価値の伝え方【前編】

※この記事は、長くなってしまったため、前編・後編の2回に分けてお届けします。前編では、ブランドの「Vision」「Story」「Design」を、後編では「Experience」と、中小食品メーカーが学べるポイントを考察します。

スーパーやセレクトショップを歩いていると、思わず手に取ってしまう食品があります。まだ食べたことはないし、価格が特別安いわけでもない。それでも、「なんだか良さそう」「贈り物にも喜ばれそう」と感じる。そんな商品に出会った経験はないでしょうか。
私は仕事柄、食品ブランドを見ると、「なぜ、このブランドは魅力的に映るのだろう」と考える癖があります。味や品質はもちろん大切ですが、それだけでは、この「なんだか良さそう」という感覚は生まれません。

商品そのものだけでなく、パッケージや言葉、ブランドコンセプト、さらにはホームページまで含めて、一つの世界観がつくられているからこそ、人は無意識のうちにそのブランドへ惹かれるのだと思います。

今回は、そんな視点から、北海道発の食品ブランド NORTH FARM STOCK を読み解いてみたいと思います。ジャムやドレッシング、ソースなどを展開する人気ブランドです。

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NORTH FARM STOCK(ノースファームストック)公式WEBサイト 北海道のこだわり食品メーカー NORTH FARM STOCK(ノースファームストック)の公式オンラインストア・WEBサイトです。

ブランドコンセプトやデザイン、商品ページまで見ていくと、「なるほど、このブランドはこうやって価値を伝えているのか」という工夫が数多く見えてきました。

ブランドを読み解く方法はいろいろありますが、今回は「Vision(目指す姿)」「Story(背景や想い)」「Design(表現)」「Experience(顧客体験)」という4つの視点から、このブランドを考察してみたいと思います。

目次

ブランドコンセプトを読む

こちらのホームページでは、ブランドコンセプトを明文化されています。
https://www.northfarmstock.com/hpgen/HPB/entries/16.html
NORTH FARM STOCKのブランドコンセプトには、「北海道のこだわり」「素材へのこだわり」「手づくりへのこだわり」という3つのメッセージが掲げられています。そこには、北海道産素材へのこだわりや、生産者とのつながり、手づくりへの想いが語られています。

その中で、私が特に印象に残ったのは、この一文です。
北海道のおいしいものを全国に発信していくことで、愛する北海道をますます元気にしていきます。

このブランドは、ジャムやドレッシングを売ることだけを目的にしているのではなく、北海道のおいしさを届けることを通して、「地域の魅力や生産者の価値を全国へ伝えたいメーカーであるというイメージ」を前面に訴求しています。
「その積み重ねが、北海道を元気にすることにつながる、というストーリー」であると感じました。


「北海道産」を売っているのではなく、「北海道への想い」を届けている

食品業界では、「北海道産」は大きな強みになります。実際、多くの商品が産地を前面に打ち出しています。NORTH FARM STOCKのサイトも北海道を前面に打ち出してはいますが、このブランドが訴求したいことは、「北海道産だから価値がある」ということだけではないようです。
商品の選定からネーミング、デザイン、ブランドコンセプト、商品説明など、サイト全体を通じて、北海道という土地で育まれた素材や、生産者とのつながり、その土地への愛着まで含めて届けたいという姿勢を表現しています。だからこそ、「素材へのこだわり」と「手づくりへのこだわり」が、それぞれ独立した話ではなく、一つのストーリーとしてつながっています。

ブランドストーリーというと、創業秘話や開発秘話を思い浮かべることがあります。
もちろんそれも大切ですが、それ以上に重要なのは、「この会社は何を大切にしているのか」が伝わることではないでしょうか。

NORTH FARM STOCKを見ていると、ストーリーは文章だけで語るものではなく、商品やデザインも含めて表現するものなのだと改めて感じます。

商品も、写真も、パッケージも、ホームページも、それぞれが少しずつ物語を構成して、全体として一つのブランド像をつくり上げていっています。だからこそ、お客様は説明を読まなくても、「なんだかこのブランドが好きだな」と感じるのではないでしょうか。


デザインは、「統一」ではなく「設計」されている

ブランドコンセプトを読んだあと、商品一覧を眺めていると、もう一つ興味深い発見がありました。
最初は「シンプルで統一感のあるデザイン」だと思っていたのですが、よく見ると、それだけではありません。

例えば、アップルシナモンジャムやルバーブジャムが並ぶシリーズでは、果物やティーポットなど、商品の特徴を象徴するシンボルが大きく配置されています。
一方で、ミニジャムのシリーズは余白を活かしたミニマルなデザインになっており、シンボルは使われていません。コンフィチュールのシリーズでは円形ラベルをアクセントにするなど、シリーズごとに異なる表現が採用されています。
つまり、すべての商品を同じデザインにしているわけではないのです。

ブランドとは、「すべてを同じデザインにすること」ではないのだと感じます。大切なのは、どこまで自由にしてよいのか、どこは必ず守るのかというデザインのルールを持つことです。そして、同じくらい大切なのが、何を伝えるかだけでなく、何をあえて伝えないかを決めることではないでしょうか。

さらに興味深いのは、情報量の少なさです。
一般的な食品パッケージでは、「北海道産」「保存料不使用」「こだわり製法」など、多くの情報を前面に押し出すことがあります。しかし、NORTH FARM STOCKの正面ラベルには、それらの情報はほとんど見当たりません。
商品正面にあるのは、①商品名に先んじて記載のあるHokkaidoの文字、②商品名、③Made In Hokkaido の表記くらいでしょうか。
一見すると説明不足にも思えますが、「北海道産ブランド」であるという世界観を伝えるには必要最低限であり、必要十分な情報が記載されています。
商品の魅力について伝えるべき情報は、商品ページやリーフレット、裏面など、適切な場所で丁寧に伝えているようです。

パッケージの役割は、商品のすべてを説明することではなく、「このブランドらしい」と感じてもらう第一印象をつくることなのだと思います。
私は、この「伝える情報」と「伝えない情報」の整理が、とても上手だと感じました。

食品メーカーでは、新商品が増えるたびにパッケージデザインが変わり、気がつけば「ブランド」ではなく「商品の集合体」になってしまうことがあります。
一方、NORTH FARM STOCKは、シリーズごとにデザインの個性を持たせながらも、ブランド全体としての統一感を保っています。

商品一覧からは、NORTH FARM STOCKは一つひとつのパッケージをデザインしているのではなく、ブランド全体を設計しているのだということが読み取れました。


後編では、NORTH FARM STOCKはどのような顧客体験を提供しているのか、そして中小食品メーカーが自社のブランドづくりに活かせるヒントを、一緒に考えていきたいと思います。

この記事を書いた人

ディアナス経営コンサルティング代表
中小企業診断士/認定支援機関/上級ウェブ解析士/ブランドマネージャー1級

食品や流通の現場で20年以上、年間1000点を超える商品提案を経験してきた実務経験豊富な経営コンサルタントです。

国に認められた中小企業診断士として、食品ビジネスの「売れる仕組み」作りから、ホームページのデータ分析、ブランドの立ち上げまで、課題解決に向けて、常に一番近くで寄り添いサポートします。
現場の目線を重視した売上アップや黒字化への道をわかりやすくご提案します。

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