差別化ポイントを探す前に考えたいこと
経営支援の現場で「競合とどこで差別化すればいいのか、悩んでいます」と、ご相談を受けることがあります。
成熟した市場でビジネスをしていると、どの商品やサービスも似て見えてきます。
機能を追加してもすぐに一般化してしまう。
その結果、「うち業界は差別化とか無理だから」「差別化なんて見当つかない」という考えになるのも
不思議なことではありません。
先日、あるネイルサロンの経営者からも同じような相談を受けました。
ワンカラーは市場が大きい。でも差別化が難しい
そのサロンは、高い技術力を持つスタッフの存在が強みでした。
特に繊細なアートネイルを得意としており、細かなデザイン表現ができることが強みです。
しかし、実際にネイル市場で需要が大きいのはワンカラーネイルでした。
ワンカラーは利用者も多く、市場規模も大きい。
一方で、多くのサロンが提供しているため差別化が難しくなります。
アートネイルは技術力で差別化できるものの、その分ターゲットは限られます。
需要の大きいワンカラーを軸にするべきなのか、得意なアートネイルを打ち出すべきなのか、
その方向性を悩まれていました。

本当の論点は別のところにあった
メニューの方向性や競合のサービスの話をしている中で、じっくり話を伺っていくと、
徐々に別の論点が見えてきました。
どう事業を進めていくべきかの話の端々に、「推し活を楽しむ人を応援したい」、「安さだけで選ぶ人ではなく、自分の好きなことにお金を使う人に来てほしい」というような趣旨の言葉がちりばめられていました。
このことにご本人はお気づきではなく、出てくる方向性のアイデアは堂々巡り。
しかしながら、この潜在的な気持ちに気づいていただけると、事業の方向性は見えてくるような気もしました。
それは「どんなお客様に選ばれたいか」を、すでに潜在的にお持ちになっていたからです。
差別化というと、商品やサービスの違いばかりに目が向きがちですが、実際には、
誰に、何の価値を届けたいのかを明確にすることで、差別化の方向性が見えてくることがあります。
差別化は機能だけで考えなくていい
差別化というと、「より高品質」、「より高性能」、「より安い」といった機能面を思い浮かべる方が多いと思います。
例えば、ネイルサロンであれば、持ちが良い、技術力が高い、繊細なアートが描ける といった点が該当します。
しかし、お客様が選ぶ理由はそれだけではありません。
例えば同じワンカラーネイルでも、仕事帰りにリラックスできる空間だから、スタッフとの会話が楽しいから、自分の趣味や価値観を理解してくれるから、という理由で選ばれることがあります。
これは機能の違いではなく、提供している価値の違いです。
心理的に得られるメリットは、機能的価値に対して情緒的価値と言われています。
価格や機能だけでは差別化が難しい市場ほど、この価値の違いが重要になります。
強み・顧客・市場の3つで考える
私は差別化を考えるとき、「顧客=だれに」「強み=何を」を整理することが大切だと考えています。
まず、自社の強みは何か。
今回のネイルサロンであれば、繊細なアートを描ける技術力です。
次に、誰に価値を届けたいのか。
推し活を楽しむ人なのか。こだわりを持ってサービスを選ぶ人なのか。
ここまでは一般的なブランディングの初歩の一手です。
私はここに、経営の目線を追加するべきと考えています。
すなわち、その市場は十分に存在するのか。ビジネスが持続可能な規模があるかどうか。
「市場規模=市場性」も重要なポイントになると考えています。
ニッチ戦略には市場性も必要
ブランディングの話になると、「ニッチな市場で一番になりましょう」という話をよく耳にします。
しかし、ニッチなら何でも良いわけではありません。
例えば、「推し活を応援するネイルサロン」というコンセプトは魅力的です。
ただし、商圏内に十分なターゲットがいるのか、継続的な需要があるのか、
客単価や来店頻度はどうか、事業として成立するのか、といった視点も必要ですよ。
とお伝えしたいです。
どれだけ魅力的なコンセプトでも、市場が小さすぎれば事業の継続は難しくなります。
逆に、市場が大きくても競争が激しすぎれば利益を確保できません。
だからこそ、強みだけでも、市場規模だけでもなく、その両方を見る必要があります。
差別化ポイントは後から見えてくる
差別化に悩むと、多くの企業では競合との違いを探し始めますが、
まず考えるべきは、自社の強みは何か。誰に価値を届けたいのか。その市場は成立するのか。
この3つです。
そして、自社の強み、届けたい価値は、機能面だけではありません。情緒的な価値も考慮するべきです。
その整理ができた結果として、「自社らしい差別化ポイント」が見えてきます。
差別化とは、無理に他社と違うことをすることではありません。
自社の強みと、お客様に届けたい価値、市場の可能性を重ね合わせた先に生まれるものです。
もし今、「差別化できない」と悩んでいるのであれば、競合分析の前に、この3つを整理してみてはいかがでしょうか。
意外なところに、自社らしい答えが見つかるかもしれません。
